KONDO's Stereogram Workshop
「なぜ立体的に見えるの?」
1.見えないものが見えてくる不思議な絵
下の絵(図1)の中には、ある立体が隠れています。 えっ、何も見えない?まあ、そう言わず、よ〜く見て下さい。 画面より向こうに立体があると念じつつ、遠くをぼ〜っと見ていると、そら浮かび上がって見えてきた見えてきた... えっ、まだ見えない?それならこのお話しを読んで下さい。 きっと見えるようになりますよ。
図1のような絵は一般にステレオグラムと呼ばれています。 数年前から世界的にブームとなり、すでにご覧になった方も多いかと思います。 ここではステレオグラムがなぜ立体的に見えるのか、その秘密をお話ししようと思います。
図1.ステレオグラム 「Eat It!」
2.人間が物を立体的に見るメカニズム
人間はどのようにして立体感・遠近感を得ているのでしょうか? 主な要因を表1に挙げてみました。
要因
解説
焦点距離
カメラのピント合わせと同じ。手前にある物ほど眼のレンズを厚くして見る。
両眼視差
両眼からの三角測量。手前にある物ほど眼を寄せて見る。
物の大きさ
大きい物ほど手前に感じる。
物の移動速度
視界を早く横切る物ほど手前に感じる。
表1.立体感・遠近感の要因
ここで焦点距離と両眼視差は眼に付いている高性能なセンサで測定した絶対的な値です。 一方、物の大きさ・移動速度は、他との相対的な比較によるものなので、それを利用して図2のように 比較的容易に遠近感をダマすことができます。 しかし、これにより得られる遠近感はそれほどリアルなものではありません。
図2.左の人が遠くに見える絵
ところがステレオグラムは、通常間違わない筈の両眼視差を巧みにダマして立体感を生んでいるため、 非常にリアルで異次元の世界を覗いているかのような錯覚すら与えます。
3.ステレオグラムの原理
人間は両眼で物を見る時、図3(a)のように手前にある物ほど眼を寄せて見ています。 そこで図3(b)のように同じ物を2つ、それぞれ片側の眼でしか見えないようにします。 すると人間は本当の位置より奥に物があると認識し疑似的な立体感・遠近感を得ます。 眼鏡をかけると立体的に見えるタイプのステレオグラムでは左右の眼で別々の物が見えるように眼鏡 などに仕掛けがしてあるのです。
図3.両眼視差による位置の認識
それでは、図1のような眼鏡なしで見えるステレオグラムはどんなカラクリなんでしょうか。 そこでもう一度図1をよく見てみると横方向に同じような模様の繰り返しになっていることに気づくと思います。 ここがポイントです。
図4.簡単なステレオグラム
図4は非常に簡単なステレオグラムの例です。 3段のマルのうち上段は一定の深さに引っ込んで(見方によっては浮き上がって)見えます。 中段は上段とは違う深さで引っ込んで(浮き上がって)見えます。 下段は徐々に深さが変わって見えます。 こんな簡単な絵でも立体的に見えるのです。 普通は左右の眼は同じマルを見ているのですが、遠目や寄り目で見ると左右の眼が横方向に一つズレた マルを同じものと勘違いします。 この時立体的に見えるのです。
図5.原理
図5は、図4下段のマルが立体的に見えた状態を説明したものです。 このように横方向に同じパターンを繰り返すことで眼をダマして立体感を出し、さらにパターンの 間隔を変えることで深さを変えて見せているのです。
なお、図5の説明は遠目で見て奥に引っ込んで見えた場合の説明です。 この場合、視線を通常より平行にするため「平行法」と呼ばれます。 逆に寄り目で見ると逆方向にズレたマルを同じと勘違いし、手前に浮き上がって見えます。 この場合は、視線を交差させるため「交差法」と呼ばれます。
4.さあ見てみよう
それでは、原理が分かったところでもう一度ステレオグラムにチャレンジしましょう。 画面より少し奥に物があるとイメージして、やや遠目で見て下さい。 この時焦点が合わなくてぼやけて見えていても大丈夫です。 立体が見えてくれば自然に焦点も合ってきます。 また、画面に自分の顔が映り込んでいる場合にはそれに焦点を合わせるのも良い方法です。
KONDO's Stereogram Workshop
にはオリジナルのステレオグラム作品が展示してありますのでぜひご覧になってください。 なお、作品は全て「平行法」を前提に作成してありますが、「交差法」でも十分楽しめます。
さて、あなたには見えましたか?
This text was written by Kazuhiko Kondo.
copyright (c) 1994-95 Kazuhiko Kondo
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近藤 和彦
Kariya, Aichi, JAPAN
kazz@kondo3d.com
Last Modified: 06-May-99